任せてもらった人だけが、育っていく

夜のオフィスで任された仕事に取り組む女性 仕事・挑戦

先輩が、何でも自分でやってしまう職場でした。新人だったわたしは、いつも「見ているだけ」。資料も、打ち合わせも、全部先輩が仕切る。楽といえば楽でしたが、なんだか自分だけが置いてけぼりで、居たたまれなかった。

だから、初めて「これは任せたぞ」と言われたときは、本当に驚きました。大型の仕事でした。不安で不安で仕方なかったけれど、任されたからには、と必死になりました。わからないことは調べ、先輩に何度も聞き、夜遅くまで考えた。あのときの必死さが、わたしを育ててくれたんだと思います。任せてもらえなければ、あの経験はありませんでした。

「任せてやらねば、人は育たず」——この言葉を初めて知ったとき、不思議に思いました。戦争のあった時代を生きた、ある軍人の言葉だと聞いたからです。なぜ、そんな時代の言葉が、今も人々の心に残っているんだろう、と。

答えは、きっとこれです。人を育てるということは、時代を選ばない。立場を選ばない。たとえ悲しい歴史のなかに生きた人の言葉であっても、「人をどう育てるか」という問いは、今を生きるわたしたちの問いと、まったく同じだから。だからこそ、この言葉は、軍人という枠を超えて、「人を育てる知恵」として、今も生き続けているのだと思います。

今、わたしは後輩に仕事を任せる立場になりました。最初は、任せるより自分でやったほうが早い、と思っていました。でも、それでは後輩はいつまでも育ちません。任せることは、見放すことではありません。見守ること。失敗したらカバーする準備をして、それでも手を出さずに待つ。それがどれだけ難しいか、今になってわかります。

任せてもらった人だけが、育っていく。これはきっと、仕事だけの話ではないのでしょう。あなたも、誰かに任せてみてください。そして、任されたら、必死にやってみてください。その必死さが、いつか必ず、あなたを育ててくれますから。

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