「自尊心は、他人を傷つける武器となる」——初めてこの言葉を見たとき、意味がわかりませんでした。自分を守るためのものが、どうして人を傷つけるんだろう。でも、あるとき、子どもの頃の記憶がふと蘇って、なるほどな、と思ったんです。
子どもの頃、わたしは親によく「あなたは○○ができない子ね」と言われました。そのたびに胸がチクッとした。大人になった今でも、ふとした瞬間に思い出す。あの言葉は、いったい何だったんだろう。今ならわかります。あれは、親の自尊心を守るための言葉だったんだ。「自分はちゃんと子育てしている」と思いたい。その気持ちが、子どもを傷つける言葉に変わっていた。
自分を守ろうとするとき、人は無意識に相手を「下」に置こうとします。自分が正しいと思いたいから、相手を「間違っている」と言う。自分がしっかりしていると思いたいから、相手を「できていない」と評価する。守っているつもりで、実は攻撃している。それが、自尊心の怖いところなんだと思います。
じゃあ、どうしたらいいのか。わたしなりに思うのは、自分を守るための言葉を発する前に、一度立ち止まること。「これは、相手のため? それとも、自分のため?」。娘に何かを言いかけたとき、仕事で誰かを評価しようとしたとき。そう自問すると、不思議と柔らかい言葉が出てくる気がします。
自尊心は、悪いものじゃありません。自分を大切に思う気持ちは、ちゃんと必要。ただ、それが武器になる前に、一度自分に聞いてみてほしい。「この言葉は、守るため? それとも、傷つけるため?」と。その一問が、きっと誰かを守ることにつながります。
あなたの言葉が、誰かの心に長く残るものでありますように。それなら、できるだけ優しいものでありますように。

